頚椎椎間板ヘルニア

 頚椎に生じたヘルニア(リンク:日本脊椎脊髄病学会)は腰椎と異なり、中枢神経である脊髄を圧迫することがあり、症状は両側の手足や体幹にまで及びさらに排尿排便障害が生じることがありますので、末梢神経のみの腰椎とは色々なことで異なります。病態は脊髄が圧迫された脊髄症と、神経根が圧迫され一側上肢の疼痛やしびれ感および麻痺が生じる神経根症、さらにその両者が合併したものです。
 当院では神経根症のみをPED法の適応にしています。しかも後方からのみですのでヘルニアの状態も限定されます。前方からの手術ですと欧米で死亡例が報告されています。また、脊髄症に対する後方からの除圧術は、先端が固定されていない外套管が障害された脊髄に触れないように長時間注意しなければなりませんので避けています。
 PED法の多くは部分的に椎弓を切除して、後方からの圧迫を解除することにより神経根を除圧します。ヘルニアを摘出できるようであれば摘出します。骨切除の範囲は今までの手術と大きく変わりませんが(図17-⑤)、筋肉への侵襲が少なく、一旦神経根のそばに内視鏡を挿入できれば、拡大視できるPED法ではヘルニアを摘出しやすくなります。

17-1図17-①.右C6/7頚椎椎間板ヘルニア(右C7神経根症)
40歳代 男性
主訴:右上肢痛としびれおよび脱力 麻痺あり。

 

 

 

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図17-②.手術中内視鏡視像

術前に椎間板造影を行い、ヘルニアをインジゴカルミンで青色に染色しておきました。
右C6/7 部分椎弓切除を行い、C7神経根を露出すると、神経根の腋窩部にヘルニアが現れました(赤矢印)。
神経根がヘルニアにより腫大し扁平化しています(赤星印☆)。

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図17-③.手術中内視鏡視像 図17-②の◯部分の拡大

硬膜を外套管で軽く排除して、ヘルニアを鉗子で摘出しました。

 

 

 

17-4図17-④.術後1週のMRI像

ヘルニアは良好に摘出され(赤矢印)、脊髄は拡大しています(白矢印)。
手術翌朝に歩行を開始した時には上肢痛は消失しており、麻痺も改善していました。術後3ヶ月で症状は完全に消失しました。
 

 

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図17-⑤.術後7日で撮影した3D-CT像

右C6/7椎弓間が一部骨切除されていますが、その範囲は通常の手術と変わりません。