硬膜損傷
硬膜は腰椎では末梢神経である馬尾を包んでいる膜です。硬膜の中にはクモ膜と呼ばれる薄い膜がもう一つあり、その中は脳脊髄液で満たされています。
硬膜が損傷しますと多くはクモ膜も破れ、その中を充満している脳脊髄液が硬膜の外に流れ出てしまいます。手術中に損傷した場合、硬膜を縫合できれば問題が生じないことが多いです。しかし、PED法では縫合はできませんので吸収性組織補強材のポリグリコール酸シートのみを5 -8 mm角にして、硬膜損傷部の上に数枚置くようにしています(図18-②)。さらに創閉鎖時に脳脊髄液が体外に漏れてこないように皮下や皮膚をしっかりと縫合しています。この操作により脳脊髄液が体外に漏出したり、髄液漏になることはないようです。
図18-①.合併症としての硬膜損傷
硬膜の中にあり、本来は観察できない馬尾が硬膜損傷により露出しています。
脊柱管狭窄症で黄色靭帯を摘出した際に、黄色靭帯と癒着していた硬膜が損傷しました。
図18-②.ポリグリコール酸シート
創閉鎖の前に硬膜損傷の背側に青色のポリグリコール酸シート を敷き詰めました。
術後、脳脊髄液の漏出はなく、損傷のない時と同じように経過しました。