腰椎変性側弯症
腰椎変性側弯症(リンク:日本脊椎脊髄病学会)は、中年以降に椎間板や椎間関節の老化変性によって腰椎が10°以上横に曲がる(側弯)状態を指すことが多く、主訴は腰痛と下肢痛です。腰痛には疲労性の慢性腰痛と動作開始時に鋭い痛みが生じる体動時の腰痛があり保存治療が優先されます。しかし、側弯が40°を越えバランスが悪い時や腰椎の前曲がり(後弯)を合併するときには矯正固定術の適応になりやすいと報告されています。一方、下肢痛は脊柱変形にもとづく脊柱管狭窄や椎間孔部狭窄および椎間板膨隆やヘルニアによる神経根の圧迫が原因となる放散痛で、しかもその病態は多岐にわたります。
PED法は腰痛に対しては適応になりません。下肢痛に対してのみ適応になります。とくに20°以下の側弯に対しては除圧術のみでも良好な結果が報告されていますので、その時には脊椎周囲の筋肉に対して侵襲の少ないPED法を行うようにしています。
腰椎変性側弯症では多椎間に及ぶ病変になりますので、主訴に関連する責任病巣部を探しだすため、きめ細かい診察を行い、画像診断を用いて、主訴と診察と画像の病変部がピンポイントで一致した時のみ側弯の程度に関係なくPED法で除圧手術を行っています。(浦山茂樹:整形外科 2018; 69(5): 427-433.)
図16-①.腰椎変性側弯症
(第4腰椎すべり症による脊柱管狭窄症を合併)
41歳 女性
主訴:両下肢痛のため5分で一休みを要する間欠跛行(馬尾型脊柱管狭窄症の症状)。
麻痺なし。側弯:22° 前弯:34°
図16-②.a. 手術前のMRI像 b.腰髄腔造影後のCT像
L5腰椎上縁で脊柱管の狭窄(a. 白矢印)が生じています。
原因はすべり症と肥大した右下関節突起(b. 赤矢印)による硬膜(b. 黒矢印)の圧迫と診断されました。
図16-③.a. 手術後7ヶ月のMRI像 b. 手術直後のCT像
右側のみ硬膜と神経根を除圧しました。
図16-④.手術後 3.5年
側弯は術後17°に前弯角は52°に改善し、
下肢痛なく毎日元気で働いています。